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自動運転キーテクノロジー「目」を支配する企業は?


自動運転キーテクノロジー「目」を支配する企業は?
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  1. コストと画質のバランスをどこで取るか。複数のアプローチが必要だ。カーデザインの修正も迫られる。ルーフは空力以上に目、センサーとしての役割が重要になる。



http://www.nikkei.com/article/DGXMZO96681300Z20C16A1000000/


車両周囲をより広く把握 自動運転、次世代の「目」

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    2016/2/24 6:30
    日本経済新聞 電子版

日経Automotive_Technology

 自動運転車やADAS(先進運転支援システム)の中核センサーである車載カメラ。その性能が、2018年ごろに大幅な進化を遂げそうだ。車載カメラ用のCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサー市場で最大手の米ON Semiconductorを筆頭に、画素数を200万画素超に高めた次世代品を各社が続々と投入する。

 量産中の車載向けCMOSイメージセンサーで最も画素数が多いのが、約130万画素の品種である。だが、ON Semiconductorで車載向けイメージセンサー事業を担当するNarayan Purohit氏によれば、「より高画素な品種が求められている」という。

 要求が高まっている理由は、車両周辺の状況をより広範囲に把握するためだ。たとえば日産自動車は2018年にも、高速道路で車線変更を伴う半自動運転技術を実用化する計画。遠方の車両や道路標識などを正確に認識するには、車載カメラの性能を現在より一段高める必要がある。

 市街地でも、広画角のカメラを使うことで人の死角だった領域まで監視できるようになる。トヨタ自動車で衝突回避システム「Safety Sense P」の開発を担当する豊福邦彦氏(同社制御システム開発部第2制御システム開発室主任)は、画素数の向上では「遠距離よりも、広い視野角度を得られる方が歩行者検知などで意義が大きい」とみる。

■検知距離は1.8倍に

 ON Semiconductorが開発したのは、車載向け裏面照射(BSI)型CMOSイメージセンサーの新製品「AR0231AT」である(表)。2016年に量産を開始する計画で、順調にいけば2018年ごろに発売する車両に搭載されることになる。

 

表 200万画素超の車載CMOSイメージセンサーの例

 画素数は約233万と、同社従来品から約1.8倍に増やした。車載カメラの検知距離は「画素数に比例して長くなる」(同社日本法人Image Sensor Team Managerの北村裕二氏)。CMOSイメージセンサー上では、車幅が10画素以上に相当しないと車両として認識できない場合が多い。画素数が増えれば、10画素分の寸法はセンサー寸法に対して小さくなり、遠くの車両でもそれを確保しやすくなる。現行の検知距離が120mであれば、200m超の遠方を検知できるようになる。

 東芝も、画素数が約209万の車載向けBSI型CMOSイメージセンサーを開発した。ただし東芝は、2015年10月末に半導体事業の構造改革の一環として、CMOSイメージセンサー事業から撤退することを決めている。同製品の製造設備はソニーに譲渡し、開発・製造の担当者もソニーグループで雇用されるように調整している。

 受け入れ先となるソニーは、車載向けCMOSイメージセンサー市場への参入を目指して取り組みを強化している真っ最中。東芝が持つ顧客基盤を活用できれば、事業は大きく進展しそうだ。ソニーは127万画素品をサンプル出荷中だが、水面下では「200万画素超のBSI型品を準備中」(ソニーの関係者)。東芝の技術との融合は今後検討していくことになる。

■半導体も200万画素対応に

 CMOSイメージセンサーの進化に歩調を合わせるように、撮影したデータを画像処理する半導体やアルゴリズムの性能も向上する。

 ルネサスエレクトロニクスは、自動運転車向けに開発した次世代車載SoC(System on a Chip)「R-Car H3」の量産を2018年3月に始める。「200万画素超のセンサーで撮影したデータを遅延なく処理できるように能力を高めた」(同社の担当者)のが大きな特徴だ。200万画素超のセンサーでは撮影データの容量が大きく、従来品では遅延なく処理するのが困難だった。

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http://www.nikkei.com/article/DGXMZO96681300Z20C16A1000000/?df=2


車両周囲をより広く把握 自動運転、次世代の「目」

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    2016/2/24 6:30

 イスラエルのMobileyeが2018年から提供する画像認識チップの新製品「EyeQ4」も、200万画素対応となる。現行の「EyeQ3」に比べて処理能力を6倍に高めることで実現した。そのEyeQ4を使って、ドイツZFは、単眼カメラを3個搭載した「TriCam 4」を開発した(図1)。長距離、中距離、短距離広角の三つのカメラを一体化したもの。200万画素超のCMOSイメージセンサーと組み合わせて、広範囲を認識できるようにした。



 

図1 (a)CMOSセンサーが200万画素に増えると、広範囲にわたって車両や人、障害物、道路標識などを認識できるようになる。(b)ZFは画角の異なる単眼カメラを3個搭載した「TriCam 4」の量産を2018年に開始する

■LED点滅の影響も回避

 自動運転の機能を高めるべく、車載カメラには今後、車両や人、障害物だけでなく信号や道路標識なども認識することが求められるようになる。そこで課題となるのが、「LEDフリッカー」と呼ばれる現象だ。LEDは人には認識できないほど高速に点滅している。LED消灯時に撮影してしまうと、標識の文字を正確に判別できなくなる。点滅周波数は、遅いもので90~100Hz、つまり1秒回に90~100回である。

 そこでON Semiconductorと東芝は、先に紹介した200万画素超のCMOSイメージセンサーにLEDフリッカーを抑制する機能を搭載した(図2)。ON Semiconductorは、センサーの受光感度を自動的に下げることで、撮影時の露光時間を長くできるようにした。LEDの点滅周期よりも露光時間を広げ、LEDの点灯を確実にとらえる。

 

 図2  ON SemiconductorのLEDフリッカー機能付きCMOSセンサーで撮影した例(右)。撮影の露光時間をLEDの点滅周期よりも長くしている


(日経Automotive 久米秀尚)

[日経Automotive2016年2月号の記事を再構成]

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